新しい陶磁器産業の形
3rd ceramics
BY HANS O. KARLSSON
7月の暑い夜、ながせ通り沿いの居酒屋から家に帰ろうと歩いていると、まだ明かりが灯っている小さな建物がありました。中を覗くと、首にタオルをかけたタンクトップ姿の若い男の人がろくろをひいているのが見えました。見せてもらえるか尋ねてみると、「もちろん!寄っていってください!僕は長屋有といいます。ここは僕たちのスタジオ、サードセラミックスですよ。」と人懐っこい笑顔をしながら招いてくれました。
サードセラミックスは長屋有、土井武史、花山和也の3人の若い人たちで作られました。「気づきのある暮らしを送る人へ」をコンセプトに掲げ、それは細やかなニュアンスをのせた彼らの作品の中に息づいています。繊細で素晴らしいディテールを纏った作品は、あなたの大切な一瞬に溶け込んでいくことでしょう。しかしながら、彼らは自分たちのことを完全な陶芸家ではなく、陶芸家と陶磁器製造メーカーの間に置き、第三の新しい道を模索したセラミストと考えています。
ここからは後日行ったインタビューです。この日は土砂降りの中、彼らのスタジオに着きました。たくさんの作品や道具で溢れたスタジオに入ると、その暖かい雰囲気にホッとしたことをよく覚えています。テーブルにつくと、滑らかで綺麗なカップにお茶を注いで出してくれました。
サードセラミックスについてと、なぜこの会社を始めたか教えてください。
長屋:土井は、最初出会ったとき、すでにたくさん焼物に関わっていました。 彼は数年間大手メーカーで働いたことがあり、大量生産のノウハウもたくさん持ち、また陶芸家としての経験もありました。一方僕は 大学でデザインを学んでいたので、陶芸に対してもっとアート寄りでした。 二人とも多治見市意匠研究所で勉強しましたが、さあ次は 陶芸家としての道を試してみるのか、それとも大手メーカーでキャリアを積むべきかどうしようかと思ってました。そこで小さなスケールながらも自分たちの持ち味を活かした作品を作っていくために、僕たちは色々と模索し始めました。僕たちは焼物作りに対する視点が違うので、お互いの足りない部分を補って行けると感じていました。陶芸家と陶磁器メーカーの間で作品作りをしたいとはっきりしたのは5年前のことで、それがスタートでした。
そのやり方はどんなメリットがあるのでしょう?
土井:たくさんの量の陶磁器を早く生産していくのがのが大手メーカーの仕事の流れです。そういった状況では製品一つ一つに手をかけていられません。反対に、生産量が少ないと一つ一つに手をかけることができます。
長屋:お客さんから製品に特別な要望があっても、僕たちはそれに対応できます。しかもそれに応えながらも、自分たちの感性を活かした製品作りができます。
土井:たくさんの量の陶磁器を早く生産していくのがのが大手メーカーの仕事の流れです。そういった状況では製品一つ一つに手をかけていられません。反対に、生産量が少ないと一つ一つに手をかけることができます。
長屋:お客さんから製品に特別な要望があっても、僕たちはそれに対応できます。しかもそれに応えながらも、自分たちの感性を活かした製品作りができます。
新しい会社を立ち上げるのにリスクなど感じませんでしたか?
長屋:それよりも一人の陶芸家として身をたてるには、コンテストで賞を獲ったりして有名になる必要があります。しかし、僕たちは顧客のニーズに応じながらも芸術的感性を取り込んだ仕事の方法を見つけたかったのです。
あなた方の顧客はどんな人たちですか?
長屋: 僕たちの製品の大部分はセレクトショップで取り扱われていますので、僕たちはショップに卸し、そこで個人のお客さんに購入していただきます。僕たちから直接購入してくださるお客さんも少しいますよ。
長屋: 僕たちの製品の大部分はセレクトショップで取り扱われていますので、僕たちはショップに卸し、そこで個人のお客さんに購入していただきます。僕たちから直接購入してくださるお客さんも少しいますよ。
サード・セラミックスという名前の由来は?
長屋:ここまでお話ししたように、陶磁器に携わる業界では大手メーカーと個々の陶芸家がいますが、僕たちはその中間の存在を目指しています。それで、3番目の形態ということでサード・セラミックスと名付けました。
長屋:ここまでお話ししたように、陶磁器に携わる業界では大手メーカーと個々の陶芸家がいますが、僕たちはその中間の存在を目指しています。それで、3番目の形態ということでサード・セラミックスと名付けました。
これからのビジョンは?
長屋:メーカーと陶芸家の間の製品作りを目指していますが、ろくろもよく使っていますよ。製品作りでは芸術的な角度を失くさず、生産量をさらに増やしていきたいと思っています。つまり手作りのニュアンスを残した製品をより多くのボリュームで生産するラインを構築することを目指しているのです。例えばこれら(彼はテーブルに置かれたカップを指差しながら)は多治見の丸朝陶器さんから注文をいただきました。その工場で途中まで作られたカップに、特別な釉薬と焼き方で仕上げをして欲しいと頼まれました。このようにちょっと特殊な方法の仕上げを施すことができます。
ご覧の通り、これらのカップも素晴らしい仕上がりです。これは伝統的な技術を取り入れながらも、自由な感性を活かして制作されています。面白いことに、最近は若者たちが伝統的なスタイルに興味を持っているようです。
長屋:メーカーと陶芸家の間の製品作りを目指していますが、ろくろもよく使っていますよ。製品作りでは芸術的な角度を失くさず、生産量をさらに増やしていきたいと思っています。つまり手作りのニュアンスを残した製品をより多くのボリュームで生産するラインを構築することを目指しているのです。例えばこれら(彼はテーブルに置かれたカップを指差しながら)は多治見の丸朝陶器さんから注文をいただきました。その工場で途中まで作られたカップに、特別な釉薬と焼き方で仕上げをして欲しいと頼まれました。このようにちょっと特殊な方法の仕上げを施すことができます。
ご覧の通り、これらのカップも素晴らしい仕上がりです。これは伝統的な技術を取り入れながらも、自由な感性を活かして制作されています。面白いことに、最近は若者たちが伝統的なスタイルに興味を持っているようです。
この地方の美濃焼の伝統からインスピレーションはありますか?
長屋:様々なスタイルがあるのが美濃焼の魅力です。この地方に織部や志野などの伝統的な焼物からヒントを得ることもあります。この地方は焼物に関わる色んな企業があるので、この仕事をするにはもってこいの場所です。陶芸家から、陶磁器産業、原料屋、それらを取り巻くインフラが全て揃っている場所は日本ではこの地方の他にありません。この地方にたくさんあるバリエーションの中から、自分のスタイルを作ることができますよ。
僕たちの代表的な製品ラインの一つに、土井がろくろの手作業で作る黒っぽいプレートがあります。大量生産はできませんので、僕たちのプロダクトはほぼセレクトショップで取り扱われています。
長屋:様々なスタイルがあるのが美濃焼の魅力です。この地方に織部や志野などの伝統的な焼物からヒントを得ることもあります。この地方は焼物に関わる色んな企業があるので、この仕事をするにはもってこいの場所です。陶芸家から、陶磁器産業、原料屋、それらを取り巻くインフラが全て揃っている場所は日本ではこの地方の他にありません。この地方にたくさんあるバリエーションの中から、自分のスタイルを作ることができますよ。
僕たちの代表的な製品ラインの一つに、土井がろくろの手作業で作る黒っぽいプレートがあります。大量生産はできませんので、僕たちのプロダクトはほぼセレクトショップで取り扱われています。
多治見への移住について教えてください。
長屋:数百万の人口がいる生活も便利な名古屋市から地方都市の多治見に移ってきました。でも陶芸家としては多治見は最高の場所ですね。ここには陶磁器に関連した人たちや企業があります。こういった場所で活動できるのは大きなメリットです。
長屋:数百万の人口がいる生活も便利な名古屋市から地方都市の多治見に移ってきました。でも陶芸家としては多治見は最高の場所ですね。ここには陶磁器に関連した人たちや企業があります。こういった場所で活動できるのは大きなメリットです。
人の繋がりについては名古屋と随分違いますか?
長屋:全然違いますよ!ここは深い人間関係があります。ご近所さんたちは僕たちのことをよく知っていて、僕たちが夜遅くまで仕事していることも理解してくれています。それはとても心強いことです。また、ここでは陶磁器業界以外の皆さんとも付き合いがあります。町の中心部に位置する僕たちのスタジオは、以前は小さな飲食店だったので、中を改装し、一から作りました。ここから歩いて行ける範囲に小さな飲食店がたくさんあり、どこかで一杯飲んでも、歩いて家に帰ることもできます。僕の妻は京都から移住しましたが、ここでの生活も楽しんでいるようです。彼女も僕たちと同じ意匠研究所で学びながら、みんなが集まるカフェ・バーのロータスで働いていました。そこでアルバイトしている人たちは意匠研究所の学生が多いんですよ。彼女は今アクセサリーを作っていますが、ここでの暮らしを本当に楽しんでるみたいです。
土井:ここに引っ越してきたとき、何もない町だなぁと思っていましたよ。例えば、食べるところとかもあまりありませんでした。でも今は随分変わり、飲食店がちらほら出来てきました。
長屋:全然違いますよ!ここは深い人間関係があります。ご近所さんたちは僕たちのことをよく知っていて、僕たちが夜遅くまで仕事していることも理解してくれています。それはとても心強いことです。また、ここでは陶磁器業界以外の皆さんとも付き合いがあります。町の中心部に位置する僕たちのスタジオは、以前は小さな飲食店だったので、中を改装し、一から作りました。ここから歩いて行ける範囲に小さな飲食店がたくさんあり、どこかで一杯飲んでも、歩いて家に帰ることもできます。僕の妻は京都から移住しましたが、ここでの生活も楽しんでいるようです。彼女も僕たちと同じ意匠研究所で学びながら、みんなが集まるカフェ・バーのロータスで働いていました。そこでアルバイトしている人たちは意匠研究所の学生が多いんですよ。彼女は今アクセサリーを作っていますが、ここでの暮らしを本当に楽しんでるみたいです。
土井:ここに引っ越してきたとき、何もない町だなぁと思っていましたよ。例えば、食べるところとかもあまりありませんでした。でも今は随分変わり、飲食店がちらほら出来てきました。
人間関係で感じることはありますか?
土井:焼物のことに詳しい人たちと話すのは楽しいです。ここには焼物の専門家がたくさんいて、その人たちは学校で教わった先生方よりずっとよく知っています。彼らは実際の経験で得た知識を持っているんですよ。
土井:焼物のことに詳しい人たちと話すのは楽しいです。ここには焼物の専門家がたくさんいて、その人たちは学校で教わった先生方よりずっとよく知っています。彼らは実際の経験で得た知識を持っているんですよ。
意匠研究所について教えてください。
長屋:えーっと、僕たちは二人とも意匠研に2年間通いました。
土井:僕たちの時は、テクニカルコースとデザインコースの2つのコースがありました。テクニカルコースはアーティスト向けで、デザインコースは陶磁器メーカーでの就職を目指す人向けでした。ただし、その2つのコースがはっきりと分かれているわけではなく、自分が選択したコースではない授業を受講したりして自由な学習環境でした。
長屋:えーっと、僕たちは二人とも意匠研に2年間通いました。
土井:僕たちの時は、テクニカルコースとデザインコースの2つのコースがありました。テクニカルコースはアーティスト向けで、デザインコースは陶磁器メーカーでの就職を目指す人向けでした。ただし、その2つのコースがはっきりと分かれているわけではなく、自分が選択したコースではない授業を受講したりして自由な学習環境でした。
意匠研究所のどんなところがよかったですか?
土井:学校とこの地域の陶磁器産業にいい繋がりがあるところです。市内のメーカーなどで働いている卒業生たちが就職情報を教えてくれたりしますよ。
長屋:土井は意匠研究所に入る前、焼物の勉強も仕事もしていて、すでに7年間焼物に携わっていました。逆に僕は入学するまでろくろをひいたこともありませんでした。でも、意匠研究所は経験のある人も無い人も同じところから始めます。初歩的なところから教えてくれるので、経験のある人には最初は退屈に感じるかもしれませんが、インスピレーションに満ちた場所でした。自由な環境でしたからね。日本の学校は普通厳しいルールがありますが、ここでは自由に実験し、研究し、考えることができます。詳しく説明するのは難しいですけど。とにかく、常にトレーニングがあったり、テストがあったりする場所ではなくてよかったです。
土井:学校とこの地域の陶磁器産業にいい繋がりがあるところです。市内のメーカーなどで働いている卒業生たちが就職情報を教えてくれたりしますよ。
長屋:土井は意匠研究所に入る前、焼物の勉強も仕事もしていて、すでに7年間焼物に携わっていました。逆に僕は入学するまでろくろをひいたこともありませんでした。でも、意匠研究所は経験のある人も無い人も同じところから始めます。初歩的なところから教えてくれるので、経験のある人には最初は退屈に感じるかもしれませんが、インスピレーションに満ちた場所でした。自由な環境でしたからね。日本の学校は普通厳しいルールがありますが、ここでは自由に実験し、研究し、考えることができます。詳しく説明するのは難しいですけど。とにかく、常にトレーニングがあったり、テストがあったりする場所ではなくてよかったです。
意匠研究所では新しい技術を取り入れたりと前向きだと聞いていますが?
長屋:多分そうだと思いますが、僕には自由な学習環境だったことの方が印象深いですね。
土井:僕がよく覚えているのは、卒業式での市長のスピーチです。彼は卒業後、多治見で働かなくてもいいんだと、とにかく有名になった時には多治見で勉強したと言ってくださいと話したんですよ(笑)!
長屋:多分そうだと思いますが、僕には自由な学習環境だったことの方が印象深いですね。
土井:僕がよく覚えているのは、卒業式での市長のスピーチです。彼は卒業後、多治見で働かなくてもいいんだと、とにかく有名になった時には多治見で勉強したと言ってくださいと話したんですよ(笑)!
あなた方もあなた方の会社もまだ若いので、これからまだまだたくさんの時間がありますね。この将来、自動化やAIなどが進んでくると思いますが、その中での手作りいうものについて考えたことはありますか?
長屋:それについては僕たちも意識しています。将来きっとそうなっていくとは思っていますよ。自動化の波にのまれず、その中でも価値のあるものを作っていきたいです。ロボットが僕たちの業界の生産の大部分を引き継いでしまっても、手作りの良さは残ると思っています。
長屋:それについては僕たちも意識しています。将来きっとそうなっていくとは思っていますよ。自動化の波にのまれず、その中でも価値のあるものを作っていきたいです。ロボットが僕たちの業界の生産の大部分を引き継いでしまっても、手作りの良さは残ると思っています。
取材が終わり、彼らのスタジオを後にしましたが、外はまだ雨が降っていました。土砂降りの中、取材に使った機材を抱えて帰り道を歩きながら、陶磁器業界でのベンチャー企業に思いを馳せていました。彼らからは自信に満ちた心強さを受けました。彼らは将来自動化が進んだとしても、伝統的な職人仕事とますます自動化されていく製造メーカーの間に自分たちの進む道 - それは自分の名前を確立しなければいけない陶芸家としての生き方でもなく、大量生産によって作品の個性が失われることがない自分たちのやり方 - を見つけたからかもしれませんね。
陶磁器業界だけでなく、他の業種でも、彼らのような勇敢な挑戦が必要かもしれません。
陶磁器業界だけでなく、他の業種でも、彼らのような勇敢な挑戦が必要かもしれません。
Walk through the 3rd ceramics studio
クリックまたはタップで360°見られます。
Company site
Company location
場所はこちらをクリック