"やくならマグカップも"
カッパが登場するシーン
新年度が始まりましたね。ディスカバー多治見では新たに面白いプロジェクトを計画しています。それは3Dテクノロジーを使い、多治見で制作されているマンガを通して、多治見の観光スポットや歴史、文化を楽しくお伝えしていきます。今回の記事では新プロジェクトへの導入として、マンガとリンクする部分についてご紹介したいと思います。
私たちの家の裏には高田川と呼ばれる小さな川が流れており、この地に自然の恵みをもたらしています。またこの川は、私たちが住んでいる小名田町と、対岸にある高田町との境界線にもなっています。昔の人は小川には妖怪などの不思議な生き物が住んでいると考えていました。日本に伝わる伝説の中で人気のあるカッパも、こういった妖怪の一つです。多治見を背景としたマンガ「焼くならマグカップも」にもカッパが登場する面白いシーンがあります。このシーンを読んだとき、家の裏を流れる川にもカッパが住んでいたかもしれないなと思い浮かべてしまいました。
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その小川 - 高田川には、いろんな種類の鳥たちが訪れます。美しい白鷺のつがいはよく訪れ、川を上ったり下ったりして獲物を探していたり、たまにはカワセミもいたり、夜には鴨たちが群れでやってきます。暗くて鴨の姿を確認できませんが、グワーグワーと鳴くので今夜も来たなと分かります。時々山鳩も見かけますし、カラス、もちろんスズメ もいます。スウェーデンの習慣で私は小さい頃から鳥に餌付けをしていますが、この近所では知ってる限り、私だけがスズメ に餌付けをしている人ではないでしょうか。スズメたちは毎日やってきて、餌の取り合いでケンカすることもあります。ある時はウシガエルが住み着き、その夏の間はボーボーとチューバのような鳴き声を聴かせてくれました。いい声ですが、あまりに鳴くので気になるようになってしまいました。ここは小学校の夏の遠足スポットにもなっていて、朝早くから大勢の子供たちがやって来てワイワイと楽しんでる声に起こされることもあります。彼らは白い帽子をかぶり網を持って、川の下流から上流へ歩きながら川の生き物を探しているようです。
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こんな風に小川は私たちの生活に季節の潤いを与えてくれますが、時には牙を剥くこともあります。洪水の時には、それは速く強い流れになり、色んなものが流されてきます。家の裏の川岸に生えている木も川の流れになぎ倒されてしまったこともあります。その木は折れてはいなかったので、その後再び立ち直って対岸の風景を隠すほど大きくなりました。ただウシガエルは流されてしまったようです。その日からチューバみたいな声を聴いていませんから。
カッパのお話
さて、水の中で暴れている怪物はなんだと思いますか?これが先ほどから話をしていた有名な妖怪のカッパですよ。
ウィキペディア英語版によると河童(カッパ)は「日本の伝説上の動物で、水辺に現れる妖怪です。川太郎、駒引、川虎、水虎とも呼ばれています。
彼らは緑色で水かきのある手足、背中には亀の甲羅を持った人間のような生き物として描かれています。頭にある皿と呼ばれる窪みにはいつも水を入れてありますが、これが割れたり、こぼれたり、乾いたりして、皿の水がなくなると、カッパは弱ってしまいます。」と説明されています。
私が生まれ育ったスウェーデンには「愛されている子はたくさんの名前がある。」ということわざがあります。カッパにもたくさんの呼び方がありますが、その中でも私が興味深く感じたものは「駒引」でした。言語学者の田中克彦氏は、この名前について学術書「新版 河童駒引考―比較民族学的研究」の中でこのように解説しています。
「水辺の牧にあそぶ馬を河童が水中に引きずりこもうとして失敗するという伝説は、日本各地だけでなく、朝鮮半島からヨーロッパの諸地域までユーラシア大陸の全域に見られる。水の神と家畜をめぐる伝承の背後には農業社会がある。」
他の多くの日本文化と同じく、カッパ伝説の起源も他の地域にあるようですが、日本人はこういった伝説をより面白くする素晴らしい才能があり、世界中から多くの関心を寄せています。下に添付した動画のように、カッパは他の惑星からやってきたと考える人もいます。この説は眉唾物ですけれどね。
カッパにまつわる話はこう書かれているようにちょっと面白く、ちょっと奇妙でもあります。「カッパは水の中で人間を襲い、その人のお尻からシリコダマと呼ばれる神秘的な器官である玉(文字通りお尻のところにある小さな玉)を取っていくと言われています。」
きっとこんな話を思いついた人たちはカッパのような悪戯好きの人だったのでしょうね。
ミカちゃんとカッパの出会い
漫画「焼くならマグカップも」の中では、主要登場人物の一人であるミカちゃんが眠りこけてしまい、カッパの国で自分自身と友達を見つけます。彼女がカッパに出会うというのは偶然ではありません。詳しく説明すると彼女が出会ったのはうなぎとカッパがミックスされた多治見市のキャラクター「うながっぱ」なのです。うなぎは以前このサイトの記事で取り上げたように、この地域の名物料理です。陶磁器の生産には水が重要であり、陶芸の町である多治見はたくさんの小川と大きな土岐川に恵まれています。うながっぱという名前は、うなぎの「うな」とカッパから付けられたようですが、想像に難くありませんよね。
ミカちゃんは水の中で小さなカッパを連れています。多分多治見を流れる土岐川の川底でしょう。ここにうなぎの写真があります。この地域の暑い夏においては、窯で働く労働者にとってうなぎは精力がついて最適な御馳走となっていたようです。うなぎは淡水で採れ、良質な脂肪が豊富な食べ物です。
多治見にいい伝わるカッパ伝説
日本にはカッパについての伝説がたくさんありますが、多治見にもいくつかの伝説が言い伝えられています。unagappa.comというサイトではその一つについて詳しく紹介されています。
「むかしむかしのこと。
まいにち日照りがつづき、田んぼも畑も干からびる寸前やった。たじみの村の衆たちは、雨が降らんので何とか降らそうと、水の神様の使いと言われるかっぱ様を祀り、なん日も太鼓をたたき続けて雨乞いをしたそうな。」
「むかしむかしのこと。
まいにち日照りがつづき、田んぼも畑も干からびる寸前やった。たじみの村の衆たちは、雨が降らんので何とか降らそうと、水の神様の使いと言われるかっぱ様を祀り、なん日も太鼓をたたき続けて雨乞いをしたそうな。」
するとどうだろう、天から恵みの雨がぽつ、ぽつ、ざあ、ざあと降ってきて、苗はすくすく育ち、その年の秋にはとても見事な稲が実った。
それからは、毎年毎年、かっぱ様を祀り、太鼓をたたいて雨乞いをし、おかげで豊作が続いたそうな。
ずっと豊作が続いたので、みんなええ気になっておった。ある時、たじみの村の衆たちは、ひょんな事から、かっぱ様の祠(ほこら)を土岐川のふちに移してしまった。怒ったかっぱ様は、雨を降らすどころか、川まで氾らんさせてしまったので、それはそれは大変やった!
たじみは、まちごと水浸しになり、田んぼも家も、何もかも流されてしまった。
お寺のほとけ様も尾張の方まで流されていってしまったらしい。
そこで、村の衆たちは、今度は、太鼓をたたいて龍神様を呼んだ。
龍神様は、勢いよく現れて、あばれているかっぱ様の頭のお皿を割ったそうな。
すると、川の水は、みるみるかっぱ様のお皿の中に吸い込まれていって、いっきに静かになったそうな。
皿を割られ水を無くしたかっぱ様は、息も絶え絶え、龍神様の足元にひざまづいておとなしくしていたら、龍神様は、かっぱ様に新しいお皿をつけてあげて、お酒をかわしながら、もうあばれない約束をして、土岐川に住まわせたそうな。
さてさて命を助けてもらって、かっぱ様が住みはじめた土岐川には、もともとうなぎがたくさんおって、焼き物が盛んな多治見の窯元の職人衆はあつい火もとの作業で、精をつけなくてはならんので、その土岐川のうなぎを重宝がって、よく食べていたそうな。
そんなことを知ってかどうか、いつの頃からか、かっぱ様もうなぎをたくさん食べるようになり、元気になってからは、あつい夏の盛りにも命をちぢめることもなく、たじみの村の衆と元気に仲良くくらしたそうな・・・・・・・。
みんなに愛されている水の妖怪、カッパ
カッパはイタズラをすると言われているにもかかわらず、日本の妖怪伝説の中でもとても人気のあるキャラクターです。もし、少し時間がありましたら、カッパをメインキャラクターに取りあげた日本酒の古いCMをご覧ください。きっとその愛らしさに口元が緩んでしまうことでしょう。
黄桜酒造の古いCMコレクション
notes
- Kappa the Steed Puller - A Comparative Ethnology Research Study 新版 河童駒引考―比較民族学的研究 (岩波文庫) (日本語) 文庫 – 1994/5/16 scroll back to text section