焼物の町、多治見まち歩き
高田/小名田 パート3 水月窯
高田 / 小名田町歩きのパート2では心地よくリラックスできるエリアと神聖な滝を探訪しました。今回は小名田の隣のエリアで禅寺、虎渓山永保寺が管理しているスポットをこの町歩きのボーナスパートとして「水月窯」をご紹介します。そこは焼物ファンの心をわしづかみにしてしまうかもしれませんね。珍しい古い窯も予約すれば見学できますよ。詳しくはお問い合わせ下さい。
多治見駅からバスに乗り、「高田口」で下車します。長いカーブを多治見駅方面に戻り、右手にあるうどん屋さんを過ぎるとその隣に水月窯という看板があります。森のなかを少し歩いていくと、木々に囲まれた窯の施設が見えてきます。水月窯の4代目である水野繁樹さんは、口ひげがよく似合い、人懐っこい笑顔で色々なことを話しながら、工房の中を案内してくれました。多治見で出会った他の陶芸家の皆さんと同じく彼からも個性的な人柄を感じました。70歳を過ぎたと話していましたが、まるで少年のような雰囲気を醸し出していました。
僕たちはまずこじんまりとして温かみを感じる部屋に通されました。その部屋は天井に数十年も燻されて真っ黒になった篠竹が張られています。壁際には短い棒を使って手で回すタイプの(電動ではない)ロクロが3つ並んでいました。この窯ではすべて手作業で行われており、昔から変わらない製法が今も続けられています。デザインも創業当時から変わってないんですよと水野さんは説明しました。
「昭和45年20歳の時にここで働き始めたんです。一度辞めたのですが、今回は4代目としてやることになりました。この年になって、毎日10時から16時までのゆっくりとした仕事のペースでも許されるようになりました。」と水野さんは笑いながら、「生産工程はすべて手作業です。この地の土を掘り、それを水の張ったタンクに沈め、土を粘土にし、それを形成、乾燥させ、絵付けをして釉薬をかけて昔からの薪窯で焼き上げます。」と説明してくれました。
水月窯は1948年、日本が誇る伝説的な陶芸家、荒川豊三(1894〜1985)によって開かれた窯です。荒川は、日本の桃山時代から江戸時代初期の志野・織部釉が、隣の瀬戸ではなく美濃で生産されていたことを証明し、人間国宝として認定されました。美濃とは、多治見市のある地域の歴史的名称であり、現在は岐阜県に位置しています。美濃焼の歴史についてはこちらのサイトであげてある「美濃焼物語」シリーズをご覧ください。
水月窯は1948年、日本が誇る伝説的な陶芸家、荒川豊三(1894〜1985)によって開かれた窯です。荒川は、日本の桃山時代から江戸時代初期の志野・織部釉が、隣の瀬戸ではなく美濃で生産されていたことを証明し、人間国宝として認定されました。美濃とは、多治見市のある地域の歴史的名称であり、現在は岐阜県に位置しています。美濃焼の歴史についてはこちらのサイトであげてある「美濃焼物語」シリーズをご覧ください。
水野さんはお話を続けます。「荒川先生は多治見の隣の可児市に昔ながらの穴窯を開き、伝統的な茶碗を作っていました。こちらの水月窯では、日常で使える焼物を作れるようにと始められ、彼の息子たちに作らせていました。それは置いといて、まずここの窯を見にいきましょう!」と言って、水野さんは立ち上がりました。
まだ焼かれていない茶碗が棚いっぱいに並べられた部屋を通りかかりました。「一度に1200個くらい焼くんですよ。この模様、どうやって書いたと思います?え~っとね、指先でちょんちょんとやっていくんですよ。それから茶碗を焼くと焼く前に比べて20%大きさが縮むんです。パンは焼くと膨らむけど、それと逆ですね!」と水野さんは笑いながら言いました。
水月窯は、伝統的な陶磁器生産を維持するために重要な役割を担ってきました。美濃焼の古い製法を(土を作るところから)全て手作業で行っている窯元は本当に珍しく、2010年2月に多治見市の無形文化財に指定されました。
水月窯は、伝統的な陶磁器生産を維持するために重要な役割を担ってきました。美濃焼の古い製法を(土を作るところから)全て手作業で行っている窯元は本当に珍しく、2010年2月に多治見市の無形文化財に指定されました。
水月窯は、モロ(作業場)、エンゴロ(匣鉢:陶磁器の焼成に使用される焼物を入れる容器で、窯の中で焼かれる焼物を直火から保護するために使用されます。)小屋、薪置き場、連房式登り窯、穴窯(大窯)、錦窯(上絵付用の窯)などの施設を持ち、美濃窯の伝統的な窯場構造になっています。
水野さんは登り窯の各連房への薪のくべ方を教えてくれました。各連房には小さな穴が開いていて、そこにテスト品を入れてどれくらい焼成が進んでいるか確かめます。また各連房の床の近くには下から上がってきた熱を次の部屋に伝えるための穴が開いています。
次に水野さんが向かったのは、志野の焼物を焼く単室の窯の穴窯です。「これはとても不思議な窯なんです。焼物を取り出すタイミングで色が違うんですよ。この窯では一度に200個くらいの茶碗しか焼けません。窯焚きも3日かかりますし、一度にできる量も少ないので効率は悪いですね。しかも作品がどのように出来上がるか全くわからない!売りものになるのはそのうちの1割程度でしょうか。」と水野さんは話してくれました。
「この窯は不思議なことに、窯が熱いうちに作品を取り出すと灰色で出てきます。でも窯の火入れが終わり、窯を冷ましてから作品を取り出すとピンク色になっているんですよ!なぜかは分からないんですけどね!!」と言って水野さんは笑いました。
この記事の中に紹介したお話は、陶芸家の水野さんが語ってくれたことのほんの一部です。ぜひ一度足を運んで見てはいかがでしょう?
この記事の中に紹介したお話は、陶芸家の水野さんが語ってくれたことのほんの一部です。ぜひ一度足を運んで見てはいかがでしょう?
directions
多治見駅から東鉄バスでの行き方:
「小名田小滝」行きの「小名田線」に乗り、「高田口」で下車します。
この記事を書いている時点では平日昼間は1時間約1本、土日祝は1日5本5本のバスが運行しています。
下車したらカーブの道を戻り、うどん店を過ぎて右手の森への道を入っていくと水月窯に到着します。
「小名田小滝」行きの「小名田線」に乗り、「高田口」で下車します。
この記事を書いている時点では平日昼間は1時間約1本、土日祝は1日5本5本のバスが運行しています。
下車したらカーブの道を戻り、うどん店を過ぎて右手の森への道を入っていくと水月窯に到着します。
隣接している飲食店(どこも人気店です!):
うどん「かま濃」
森の中のカフェ「バームドフォレスト」
うどん「かま濃」
森の中のカフェ「バームドフォレスト」