茶道イベントと茶室について
By Hans Karlsson
オーディオで聞きたい方はこちらから(英語ナレーションのみ)
今回は日出ずる国 日本で、何世紀にも渡って磨かれてきた素晴らしい伝統文化である茶道についてのお話をしましょう。茶道もしくは茶の湯とも呼ばれ、抹茶を点てて飲むのですが、特別な空間、道具を伴い、そのお作法も細かい手順に則って進める荘厳な儀式なのです。
この茶道の儀式は日本人の日常生活の中にある美を見出し大事にするという禅の教えがルーツとなっています。結局のところそれは客をもてなす方法なのですが、まるで社交ダンスの振付のようにすべてが決められた順序に従って行われ、その中にも美を感じさせるのです。茶道の起源は中国まで遡り(1)、日本では鎌倉時代に禅僧たちによって初めて行われました(2)。禅僧たちは長い座禅を眠らず乗り切るために、ちょっとした気分転換が必要だったかもれしませんね。時を経ていきながらも茶道は進化して現在に至るわけですが、16世紀の僧侶であり茶人でもあった千利休は茶道全体を洗練させ、人との出会いを大事にするという感覚を与えたのです。
日本の茶道では全員が床に座り、儀式の主役の一つである茶碗を全員でシェアして使います。これは茶葉を使って淹れる中国茶のようにお茶そのものを楽しみ、味わうことにフォーカスした方法とは全く異なります。戦国時代の武将たちは茶道や茶道具を好み、そして茶室はその長い戦国時代の間、重要人物と会談する場所でもありました。
今日では茶道は趣味の一つとして多くの人に楽しまれ、観光客が体験できる茶室もあります。茶道は和を重んじ、人への尊敬の念、清廉潔白さそして静謐さを兼ね備えた日本文化の真髄と言えます。今回の記事では多治見でカジュアルに茶道を楽しんでいるグループを2件紹介します。
この記事を読んでいる皆さん、本題に入る前に一言。お抹茶をちびりちびりと飲みながら複雑な手順に翻弄されていても、茶道で最も大切なことはその瞬間なんだということをどうか忘れないでください。結局のところ日本の「一期一会」という言葉にあるように、出会いも空気感もその一瞬、その場所にしかなのですから。
長期作陶滞在施設Ho-caのお茶会
趣深い多治見の町に位置する長期作陶滞在施設Ho-caは世界を旅する陶芸愛好家たちのホットスポットとなっています。ここに訪れるアート冒険家の多くは抹茶茶碗の制作に魅力を感じているのですが、それが主役の一つである茶道についてはあまり知らないようです。茶碗は単なる器ではなく、茶道の芸術に深く結びついたシンボルなのです。ですから抹茶碗作りを志している方たちには茶の湯の真髄を理解するため、茶道に没頭することを心からお勧めします。
しかしながら、茶道はその文化の濃さと複雑さで、素人には敷居が高く感じられるかもしれません。そこで長期作陶滞在施設Ho-caでは熱心な生徒たちのため、気楽なお茶会を開いています。この楽しい会では茶道の入門として親しみやすく紹介しており、その意義を理解することで陶芸への造詣がより深まることでしょう。
しかしながら、茶道はその文化の濃さと複雑さで、素人には敷居が高く感じられるかもしれません。そこで長期作陶滞在施設Ho-caでは熱心な生徒たちのため、気楽なお茶会を開いています。この楽しい会では茶道の入門として親しみやすく紹介しており、その意義を理解することで陶芸への造詣がより深まることでしょう。
僕が尊敬するHo-caを率いる柴田節郎先生のお話をさせてください。多治見市内でも絵になる風景に囲まれた場所に岐阜県現代陶芸美術館を備えたセラミックパークがあり、その施設内に素敵なお茶室があります。ここでは陶芸講師である柴田先生と茶道を学んでいる方々がお茶会を手伝い、美味しいお抹茶と和菓子に舌鼓みを打ちながら、教室の生徒さんに楽しく簡単な茶道を教えます。
Ho-caは茶道を出来るだけ身近に簡単に体験できるよう、毎回お茶会の内容を改良しています。この儀式のなかであなたの手作りの抹茶碗を使えるとしたら嬉しいと思いませんか?
これを読んでる皆さん、まだこの楽しい日はこれだけで終わりません。柴田先生は滞在者の皆さんを囲んで定期的に食事会を開いており、参加者が持ち寄った地元の料理や滞在している生徒たちが作った料理などで盛り上がります。今回のお茶会の打ち上げパーティでは素敵な着物姿で参加したイタリア人生徒さんが故郷のシチリア風スパゲッティを振舞ってくれました。楽しい仲間で集まり、とてもいい思い出になりました!
多治見の新しい茶室「かまわ菴」
さて次は16世紀の茶人 千利休の影響を受けたミニマムで品のある日本の茶室のお話です。利休は道具の職人技にまでこだわり、その中にも素朴さ、閑静さそしてわびさびの美を見出した人でもあります。
その利休が目指した伝統的な美を踏襲しつつ、ユニークなテーマを持つ現代的な茶室を訪れた時のことをお話しましょう。この茶室のオーナーの加藤貴也さんに案内していただきましたよ。
この動画では加藤さんが多治見の街中に新しく建てた茶室「かまわ菴」を案内します。この日の加藤さんはカジュアルな服装でしたが、お茶席では正装されるそうです。
この動画は加藤さんが床の間を紹介していますが、180VRですのでMETAのQUEST(VRヘッドセット)をお持ちの方はこの様子を立体映像として楽しんでいただけます。VRヘッドセットでの体験方法はこのページの一番下に載せておきますのでぜひお試しください。このプレゼンテーションでは英語のナレーションで伝統的な日本の茶室の床の間(床の間は掛け軸、生け花、書などの美術品などを飾る部屋の一角)を説明します。
この現代的な茶室は伝統的な要素とモダンな要素を見事に融合させつつ、茶の湯の真髄である簡素さと慎ましさを保っています。この茶室の建築家は様々な素材やデザインを試し、畳、天然木、ガラスやプラスチックなどを使い、ミニマルなインテリアを作り上げました。モダンな茶室には観葉植物や小ぶりな樹木、印象的な建築デザインが取り入られることもあります。
焼物の町である多治見の茶室では地元のグループが茶の湯の伝統にヒントを得て、焼物をテーマにした静謐な空間を作り上げました。
この現代的な茶室は伝統的な要素とモダンな要素を見事に融合させつつ、茶の湯の真髄である簡素さと慎ましさを保っています。この茶室の建築家は様々な素材やデザインを試し、畳、天然木、ガラスやプラスチックなどを使い、ミニマルなインテリアを作り上げました。モダンな茶室には観葉植物や小ぶりな樹木、印象的な建築デザインが取り入られることもあります。
焼物の町である多治見の茶室では地元のグループが茶の湯の伝統にヒントを得て、焼物をテーマにした静謐な空間を作り上げました。
茶室「かまわ菴」は古くからの伝統に則って建てられていますが、地元の焼物文化をさりげなく取り入れているところがユニークなポイントです。床の間に飾られた小さな白い玉もその一つですね。また築140年の古民家を改築したときに出た建材を現代的な空間に丁寧に再利用しています。焼物を焼く窯に使われるものと同じ耐熱レンガで作った壁と、近隣地域の伝統工芸の美濃和紙を貼った壁で囲まれた茶室に座っていることを想像してみてください!心の中があたたかくなるような心地いい雰囲気に包まれることでしょう。
庭に面した壁は電動で上に開けられ、古い日本建築によく見られる外と中がシームレスに溶け合う空間を演出でき、広さを感じさせます。
加藤さんたちのグループはこのスペースを使って外国人観光客に人気の茶道体験を提供することも予定しています。ご興味のある方はこのサイトのお問合せページからお尋ねください。過去と現在の伝統が混ざりあった茶の湯の魅惑的な世界に浸ってみるのはいかがでしょうか?
茶室「かまわ菴」をVRで体験
この記事の取材では加藤貴也さんが茶室「かまわ菴」の床の間を案内する様子を180VR で収録しました。床の間は茶室でも重要な要素の一つで、そこには空間の象徴となる大事な装飾が見られます。この部屋に入って加藤さんに実際に会うような体験をするには、VRヘッドセットが必要です。Meta Questヘッドセット用のVRアプリでYouTubeを開き、「Kamawa-an」を検索すると2分間の体験ができます。またDeoVRアプリで「Tajimi」と検索することもできます。どちらも無料で使えますよ。
この記事の豆知識
- 815年、すでに千年以上も茶が飲まれていた中国から帰国した僧・栄中が、嵯峨天皇のために自ら煎茶を点てた。この出来事が、日本における茶道と禅宗の結びつきの始まりとなった。(1)
- 鎌倉時代(1192-1333)になると、茶道はより儀式化され、禅宗と結びついて大きな発展を遂げた。
「お茶の楽しみは、寺院から武士階級へと広がっていった。初期の茶会では、中国から輸入された高価な茶道具を披露するとともに、競技、酒、賭博が行われた。時が経つにつれて、これらの初期の集まりの要素が簡略化され、今日行われている茶道(茶の湯または茶道)へと進化した」。(2) - こうした粗野な風習は、最も有名な茶人である千利休のおかげもあって、次第に薄れていった。しかし、当時の天下人であった豊臣秀吉は、千利休に切腹を命じた。正確な理由はいまだ不明である。